水海道さくら病院の改革~地域を支えるコミュニティホスピタルを目指して~
医療法人寛正会 水海道さくら病院 様
病床機能一般急性期、地域包括ケア、透析医療、在宅医療
病床数93 床
地域茨城県常総市
目次
今回の事例のポイント
課題
高齢化の進展に伴い、隣接するつくば市の医療提供体制が充実する一方で、水海道さくら病院ではあと一歩特徴を打ち出せずにいた。
解決策
高齢化や医療ニーズの多様化に対応するために、「治す」だけではなく「支える」医療を提供する新たな役割を担うことを目指し、以下の改革を実施。
- 地域包括ケア病床の導入や在宅医療の充実
- リハビリ、透析医療、栄養指導、口腔ケアの強化
- 地域住民や多国籍患者への対応力の向上
- 地域活動やヘルスプロモーションの推進
結果
病床稼働率と在宅復帰率の向上、患者の機能回復の促進、地域医療支援体制の強化が実現。今後は総合診療機能や地域連携をさらなる強化と、それに伴う人材育成をしていく予定。
1. はじめに
茨城県常総市にある水海道さくら病院は、長年、地域に根差した医療を提供してきた病院です。近年は「治し、支える」医療を掲げ、コミュニティホスピタルへの転換を目指し、様々な改革に取り組んでいます。
2. 水海道さくら病院の概要
- 所在地:茨城県常総市
- 病床数:93床(一般38床/障害者27床(内、地域包括ケア17床)/療養28床)
- 機能:一般急性期、地域包括ケア、透析医療、在宅医療
3. 改革の背景
水海道さくら病院は、昭和56年の田中医院(19床 有床診療所)から始まり、一般病床の増床、療養病床の増床、透析センター開設と発展してきました。2015年の関東・東北豪雨では浸水被害を受けながらも、いち早く診療を再開し、途切れることなく地域医療を支えてきました。一方で隣接するつくば市では高齢化に伴い医療提供体制が充実する中、病院としての特徴を明確に打ち出せず、経営が低迷。さらに医療ニーズの多様化等も進み、新たな役割を担う必要に迫られていました。
一方で隣接するつくば市では高齢化に伴い医療提供体制が充実する中、病院としての特徴を明確に打ち出せず、経営は悪化。さらに医療ニーズの多様化等も進み、新たな役割を担う必要に迫られていました。
4. 改革の目標
水海道さくら病院は、「治す」医療だけでなく、「治し、支える」医療を提供するコミュニティホスピタルを目指し、以下の目標を掲げて改革を進めています。
- 総合診療を軸に、超急性期以外のすべての医療(在宅医療含む)、リハビリ、食支援、予防医療などのケアをワンストップで提供していくことで、「治し、支える」医療を実践する。
- 病院を出て、地域に入り込むことで、地域の健康増進にも積極的に関わる。
- 地域医療を担う人材を育成し、地域をまるごと支えていく。
5. 改革の内容
水海道さくら病院は、上記の目標を達成するために、多岐にわたる改革を実施しています。主な改革内容は下記の通りです。
地域包括ケア病床の導入
- 2017年に地域包括ケア病床を導入し、急性期治療後の患者さんに対して、在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供。
- 在宅医療と連携して、レスパイト入院等の積極的な受入を実施。
在宅医療の充実
- 機能強化型在宅療養支援病院として、地域住民の在宅療養を支援。
- 訪問診療、訪問リハビリテーションなど、多様な在宅医療サービスを実施。
- 摂食嚥下障害への対応など、高齢者のニーズに対応した在宅医療を提供。
- 多職種連携によるチーム医療を推進し、質の高い在宅医療を提供。
透析医療の継続
- 地域唯一の入院透析医療を継続し、地域住民の生活を支える。
- 保存期から透析導入、維持透析、お看取りまで、一貫した透析医療を提供。
- 腎臓病療養指導士の管理栄養士による栄養指導やセラピストによる透析患者向けリハビリの実施。
リハビリテーション部門の強化
- 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのリハビリスタッフを増員。
- 患者さんの機能回復を支援し、在宅復帰を促進。
- 積極的にリハビリテーションを提供し、患者さんのQOL向上に貢献。
摂食嚥下リハビリ・栄養指導の強化
- 言語聴覚士、管理栄養士による病棟での摂食嚥下リハビリ、栄養指導の強化。
- 訪問における、多職種での誤嚥予防。
病院の強みの明確化
- 総合診療、透析医療、在宅医療のさらなる強化。
- 「リハビリテーション」「栄養」「口腔ケア」を病院の強みとして明確化。
- 地域在住の多国籍人材への適切な医療提供(ブラジル、スリランカ、フィリピン、パキスタン、インド、タイ、ベトナム等)。
地域活動の強化
- 地域イベントへの参加、地域企業とのイベント実施、また学生たちとの花壇の整備などを通じた地域環境の整備。
- 住民向けの各種勉強会、講演会等の実施。
- 公式LINEによる情報発信。
水海道さくら病院公式キャラクター「さくらちゃん」
6. 支援内容
この水海道さくら病院の改革にあたって、当社が果たして来た役割は下記の通りです。
- 各種事業計画の策定と実行支援
(地域包括ケア病床・在宅療養支援病院の企画、実行支援、地域連携強化等) - 医師・スタッフの採用支援
(広報強化、近隣大学・医療機関や医師紹介業との連携強化) - 地域活動支援
(自治体との連携、地域のイベント参加、花壇などの整備等) - 給与計算、経理等バックオフィス代行
(クラウド型のシステム導入、遠隔による給与計算、経理等のアウトソーシング) - 広報・マーケティング支援
(パンフ、ホームページ改訂、学会参加の支援、地域活動強化)
7. 改革の成果と今後の展望
水海道さくら病院の改革は、以下の成果を上げています。
- 地域包括ケア病床の導入により、病床稼働と在宅復帰率が向上した。
- 在宅医療の充実により、地域住民の在宅療養を支援できる体制が強化された。
- リハビリテーション部門の強化により、患者さんの機能回復が促進された。
今後は、以下の点を重点的に取り組み、更なる改革を進めていく予定です。
- 超急性期以外の医療をワンストップで提供する体制にむけた総合診療機能の強化。
- 高度医療機関との下り搬送との密度の高い連携強化。
- リハビリテーション、栄養、口腔ケアを強みとしたサービス提供。
- 地域活動やヘルスプロモーションを通して地域の健康増進への更なる貢献。
- 地域医療人材の教育・育成。
8. さいごに
水海道さくら病院は、「治し、支える」医療を提供するコミュニティホスピタルを目指し、地域包括ケア、在宅医療、リハビリテーション、透析医療など、多岐にわたる改革に取り組んでいます。これらの改革は、地域住民の健康増進、地域医療の充実、医療従事者の働きがい向上に貢献するものと期待されます。